愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
多少シミになっているが、ダークグレーのスーツのおかげでそこまでは目立たない。
『ハンカチをプレゼントしたいから連絡先を教えて』
それでもまだ気になるのだろう。彼は胸元に目線を落としたまま言った。
『いえ、そんなお気遣いはしないでください。そのまま返していただければ大丈夫ですから』
『そうはいかないよ。――って、キミ……』
そこで初めて南をまじまじと見て、彼が言葉を止める。
『あの、なにか……?』
『いや、あんまり美人だから驚いたんだ。日本人? こんなに美しい瞳を見たのは初めてだよ』
男性が南に手を伸ばし、髪に触れようとしたそのとき、目の前に人影がさっと割り込む。
『申し訳ありませんが、私の連れなので』
碧唯だった。