冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 するとリーンハルトが焚火の向こうを指し示す。その方向には黒く大きなグロテスクな塊が……。

「ひっ!」
「大丈夫だよ。息の根を止めてあるから」
 確かに体に風穴がいくつも空きどす黒い血が見え、ほんのりと凍っている。氷の槍をいくつも打ち込んだのだろうか。あのかたい皮膚を突き破るなんて、どんな硬度なのかと思う。
「あれ、ベヒモスじゃない。あなた一人であんな大物仕留めたの?」
 レティシアが恐怖にわななく。

「ああ」
 何でもないことのように返事をする。

「すごいわ。リーンハルト!」
「普通だよ」
 賞賛するレティシアにリーンハルトはそっけなく答える。

「え、だってそんな人ばかりではないでしょ?」
「だから人手不足なんだよ。ときおりごっそり人が減るだろう?」

 確かに彼の言う通りだ。いつもは込んでいる食堂がたまに閑散とすることがある。その後必ず新顔の騎士や魔法師がやって来る。

「そういえば人の出入りが激しいわね」

「実践で脱落者が出るんだよ。模擬戦とは違うからね。みな配置換えか去って行く」

「だから、あなたいつも働いているのね。リーンハルトも弱くて脱落すればよかったのに」
「どうしてそういう発想になるんだよ」
 呆れたように言う。

「そうそう、携帯食二人分持ってきたよ」

「それはありがたいが予備としてとっておけよ。それより、なんでこんな無謀なことをしたんだ。途中で魔獣に遭っていたかもしれないんだぞ」

 義弟がお説教モードに入ったようだ。前世の経験から分かる。

「あなたが心配でそこまで考えられなかった」
 
 リーンハルトが舌打ちするのが聞こえた。行儀の悪い義弟だ。

「先に寝ろよ。俺が火の番をする」

 意外にも説教にはならなかった。

「いいわよ。私がやるわ。あなたは疲れたでしょ。けが人なんだし先に寝て」
「いいよ。時間が来たら起こすから。レティシアが先に寝ろ」

 リーンハルトがなぜか強引に先に寝かせようとする。

「あのね、リーンハルト。私、野宿はここに来た時以来なの。だから、目がさえて眠れないの。あとは任せて火の番ぐらいできるから」

 義弟がため息を吐く。彼は一人でもなんとかやっていた。きちんと結界石を使って魔獣の侵入をふせぐ結界をはっている。探しに来てかえって迷惑をかけてしまったようだ。火の番ぐらいして、彼を休ませたい。

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