冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「じゃあ。話してくれないか?」
「何を?」
「俺のことをなんで嫌いなふりをしていたのか」
「あのそれは……」
 レティシアが言いよどむ。

「ここにきて、レティシアに嫌われていないのはよく分かった。あとひと月で任期あけだ。話してくれてもいいだろ」

 実はリーンハルトと上手くいきかけていて嬉しかった。浮かれていたと言ってもいい。この話をすることによってまた彼が離れていってしまうだろう。
 レティシアのくり返しは結局ミザリーや他の人の悪口になってしまうから。彼はそれを嫌う。きっと軽蔑される。でもそれは自分の罪だから……。

「いいけれど。話の途中で絶対に口を挟まないと約束してくれる?」
「どうして?」
「あなたの嫌いな、人の悪口になるから。リーンハルトはきっと途中で頭に来ちゃうよ」

 レティシアにはやはり聞きたくないと言って欲しい気持ちがあった。
 しかし、リーンハルトは決然と言う。

「わかった。口を挟まない」

 彼の深く青い双眸がまっすぐにレティシアを見る。この話が終わるころ彼の瞳には軽蔑と嫌悪の色が浮かぶだろう。上手く行っていた前回ですら、心配してはもらえたけれど信じてもらえなかったのだから。
 だが傷ついた彼には聞く権利がある。いわばこれは罪滅ぼしだ。







 ◇

 レティシアはまず冤罪で死刑になった話から始めた。途中端折りながら、三巡目に来たところで続きを話すのに躊躇する。

 四巡目はあまり詳しく話したくない。しかし、それがなければ彼を嫌いなふりをした答えにならない。
 だから、彼がレティシアを庇って死ぬところまでを話した。なるべく淡々と感情を込めずに話したつもりだったのに自然と体が震える。記憶が再生され、どうしようもなく怖くなった。

 しばらく沈黙が落ち、パチパチと焚火のはぜる音だけが響く。

「それで終わりか? 荒唐無稽で、胸糞の悪くなる妄想だな」

とリーンハルトがぼそりと言う。分かっていた。こうなることは。

「うん、そうだね。私頭がおかしいの。嫌いになって」

 なにより今は彼が無事でよかった。秘密も話せて肩の荷が下りた気がする。安心したせいか、レティシアは強い眠気に襲われた。


 ◇


 人の話し声でレティシアは目を覚ました。

「まずいな。噂になったら」
「なんとかごまかしますか?」

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