冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 その先は怖くて言えなかった。涙がぽろぽろと零れ落ちる。もう二度とケガなどして欲しくない。リーンハルトが困ったような顔をして、タオルでレティシアの涙を拭いてくれる。さすがにそれは姉として情けなくてレティシアは泣き止んだ。

「そうだ。レティシアに謝らなくちゃ」
「え?」
「アミュレットが壊れた。済まない。これしか残らなかった」
 攻撃を食らったとき粉々に砕けたという。リーンハルトが破片を三分の一ほど差し出した。けがをした体で回収したようだ。

「いいのに別に、役に立ったのなら。あなたが生きているのならば私は何もいらない」
 
 レティシアは心からの笑みを浮かべた。本当に彼が助かってよかった。レティシアは神に祈りを捧げた。
 その横でリーンハルトが真っ赤になっているとも知らずに。
「なんで、お前はそういうことさらりと言うんだよ」
 義弟の呟きはレティシアの耳には届かなかった。
 それどころか彼女は必死にリンゴをむいている。
「ねえ、見てリーンハルト、うさぎ!」
「は?」
 レティシアは器用にカットしたリンゴをリーンハルトに渡す。
「これの作り方、食堂の人に聞いたの。可愛いでしょ? リーンハルトが喜ぶと思って!」
 嬉しそうに言う。

「俺、子供じゃないし、普通に切れよ」
 リーンハルトは真顔でシャリシャリとリンゴを食べる。
「え、そんな薄い反応?」
「いや、こんなんで喜ぶの五歳くらいまでだろ」
 レティシアは五歳のリーンハルトを知らなくて残念に思う。十歳で天使のように可愛かった。五歳のときなどどれほど可愛かったか。
「はあ、本当に残念だわ。初めて会ったのが、あなたが十歳のときで」
「黙れよ」
 その後、二人はリンゴを食べながら、くだらない言い合いをした。

 リーンハルトの体が治るころ、レティシア達は引き上げの準備を始めた。
 いよいよ任期の終了だ。




 ◇

「レティシア、お帰りなさい」

 馬車から降りると義母オデットに抱きしめられた。

 光魔法師は後方支援だから、大丈夫だと手紙にも書いていたが心配していたようだ。

「ご心配おかけしてすみません。お義母様」

 なんだか本当の母みたいだ。自分には二人の母がいる。レティシアはそれを幸せに思った。隣では義父のオスカーがリーンハルトの無事を喜び労っている。二人は両親に温かく迎え入れられた。

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