冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 そう言って真っ赤になると去って行ってしまった。なにか彼の気に障るようなことを言ったのかとレティシアは首をひねる。
 
 営舎でも彼が顔を赤くして去って行くことがよくあった。レティシアは知らず知らずに彼が嫌がることを言ってしまうのだろう。少ししゅんとなる。

 すると後ろから軽やかな笑い声が聞こえた。振り返ると義母のオデットだ。

「レティシア、あなたってほんとに」
といってまた笑いだす。レティシアは真っ赤になった。

「私、何かおかしなこと言いました?」

 最近自分が少しずれているという自覚がある。営舎にいてそれがよくわかった。

 今度はリーンハルトの座っていたところにオデットが腰を下ろす。

「いいえ、そんなことないわ。笑ったりしてごめんなさい。何にしてもあなたが帰ってきて家のなかが明るくなったわ」
「そうなんですか? ミザリーがいるじゃないですか」 
 皮肉ではなく本音だ。社交的なミザリーは明るく華やかだ。彼女にはその場を明るくする才能がある。レティシアは家族そろっての食事でもミザリーやオデットのように人が興味を持つような楽しい話題を提供することはない。

「ミザリーはミザリー、あなたはあなたよ。家族は誰かが一人欠けてもダメなの」
 
 オデットのその言葉はレティシアの心を打つ。

「ごめんなさい。お義母様、私、我がままを言って討伐隊にはいったりして」
「いいのよ。レティシア、リーンハルトを守ってくれてありがとう」
 その言葉に驚いた。

「まさか。私は何もしていません。むしろリーンハルトに迷惑ばかり」
「それでもよ。あなたの存在は心の支えになったはず。照れ屋で素直じゃないのよ。本当はとても嬉しいはず。そういう年頃だから、もう少し待ってあげて」

 そう言って義母が微笑む。

「はい」

 オデットがそういうのならば、待ってみよう。しかし、彼は変わらない気がするが。それともいつの間にか大人になってしまうのだろうか。

「討伐では心身ともに疲弊して帰ってくる者も多いと聞くわ。一心に自分を信じ思ってくれる存在って存外大きいものなのよ。その人の為に絶対に生きて帰ろうと思うから。
 何にしても、あなた達の元気な顔が見られてよかった」

 義母のいう事がじわりじわりと胸にしみわたる。

 今まで自分一人が頑張って、自分一人で生きている気になっていた。
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