冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 屋敷にはまだポツリポツリと明かりがついている。空には星が瞬き、水面に月が映る。水を含んだ土の匂い。夜の香りが心地よい。

 ぼうっと池の水面を眺めているといきなりぱしゃりと水が吹きあがった。

「きゃあ!」

 レティシアはびっくりして、転びそうになる。しかし、後ろからがっしりと支えられた。

「ごめん、そこまで驚くと思わなかった」
 笑いを含んだ声。
「え? リーンハルト! ひどい!」
 彼がくすくすと笑っている。
「レティシア、怖がりなんだね」
「違うわ。びっくりしただけよ。あなた意外と子供っぽいのね」
 レティシアが真っ赤になり、文句を言う。本音を言うと少し怖かった。

「子供の頃は噴水だといって、喜んでくれたじゃないか」
「え? 子供の頃?」
 覚えがない。

「そうだよ。ここに来たばかりの頃。覚えてないのか?」
「あなた、そんなに前から魔法が使えたの? 私じゃなくてお姉様じゃないの?」
「まさか。姉上にこんな悪戯しかけるわけないじゃない。それにこんな子供騙しで喜ぶとは思えない」

「まあ、ひどい」
「なんだよ。あの頃は何度もやってくれってせがんでいたのに」
といってリーンハルトが笑う。パーティの余韻か今夜の彼は楽しそうだ。

「それ本当に私?」
 レティシアが疑り深い目で見る。彼とそんな風に遊んだ覚えがない。

「当たり前だろ。性格も顔も反応も全然違うのに間違えるわけないじゃないか」
 リーンハルトが呆れたように言う。そこでレティシアはいいことを思いつく。

「ねえ。リーンハルト、噴水みたいにいっぱい水柱を立てることができる?」
 すると彼が悪戯っぽく笑う。
「いいよ」
 すぐに水は池から噴き出した。
「リーンハルト、水あげすぎ。服にかかっちゃう」
「注文が多いなあ」

 そう言いながらも調節してくれる。レティシアはそこに光魔法を放つ。
「ほら、綺麗でしょ? 水の中に星が瞬いてるみたい」
 レティシアは得意になる。

「レティシア、それならライティングでいいんじゃないの?」
「何よ。光魔法で水が浄化されてお得な感じがするじゃない」
 義弟といるとすごく楽しい。

「やっぱり、レティシアだよ。あの頃もはしゃいでた。水柱を何本も立てろと同じことを言った。おかげで俺の技術が磨かれた。ここで一緒に遊んだこと、本当に覚えてないのか?」
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