冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「まったく、それじゃ俺も悪いじゃないか。それでお前に婚約者にもっと会えだのなんだと言っていたのか?」
 リーンハルトが頭を抱える。
「どうして? サロンのタルトとても美味しいのよ」
「いや、そうではなくて……。お前と話すと、話がずれていく」
「失礼ね。そんなことないわよ」
 レティシアが心外とばかりに言う。

「いいから、黙れ。だいたい、なんで俺はレティシアの誕生日の直前に作業場なんて行ったんだ?」
 黙れと言ったり質問してきたり、勝手な義弟だ。
「私が夜遅かったから心配してくれたのよ」
「それでトレバー氏が、俺との仲をあやしんだんだろう?」

「そうよ。下衆の勘繰りもいいところだわ」
 ちょっとトレバーには恨みがある。

「俺が、あの日あの時間に作業場に行くと分かっていた『あの人』が知らせた」
「え?」
 レティシアは目を瞬く。彼は結構きちんと聞いていたようだ。

「しかもそれはお前の誕生日の直前。俺はきっと『あの人』にとって予測しやすい行動を」
 リーンハルトが言いかけたその時、屋敷から洩れる光が突然消えた。二人とも一瞬口を噤む。

「あら、皆寝たのかしら?」
 胸騒ぎがする。
「いや、まさか、全体的に明かりが消えている。それにバートン先生は夜を徹して話す気満々だよ」
「痛いっ」

 突然胸のあたりに痛みが走る。

「レティシア?」

 思い当たり、肌身離さず持っている母の形見の指輪を取り出す。

「割れてる」
「それは、形見か?」
 リーンハルトの顔が曇る。
「ええ……」
 悲しい。
「けがはない?」
「うん、いきなり割れたから、ちょっと切っただけ、私は大丈夫。それより屋敷に戻りましょう」

 初めて感じる禍々しい魔力。嫌な気配が漂っている。二人は自然に手を握り合い屋敷へ向かった。



 ◇

 二人が裏口から屋敷に戻ると明かりが何度か瞬き、再び灯った。

「キャアーーーーッ!」

 鳴り響く悲鳴にお互いの顔を合わせる。

「あっちだ」

 レティシアは走るリーンハルトの後について行く。しかし、追いつけない。

「ちょっと待って、リーンハルト危ないわ!」
 レティシアの言葉に彼が足を止め振り返る。
「大丈夫、二度も殺されない。最も一度目は憶えていないが。それに俺が死んで、レティシアがまた自死しても困るからね」
 リーンハルトの言葉に目を見開く。
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