冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「私がいた塔とは違うわね。随分厳重」
「闇の魔力が断続的に漏れているから、一番厳重な牢屋にいる。それから術が行えないように拘束されているから」

 リーンハルトは何度か面会し、オスカーもオデットも訪れたという。しかし、彼女は誰のことも覚えていなかった。

「ねえ、ミザリーってあなたが何歳の時家に来たの?」
「俺が四歳のころかな。彼女の希望で養子縁組の件は伏せられたんだ」
「たった七歳の子供がそれを希望したの?」
 リーンハルトが頷く。
「それから、ミザリーは髪の色を染めていた。母上は気付いていたが、金髪かと思っていたといっていた。ミザリーが誤魔化したんだ。金色が均一ではないから綺麗に染めたいと言っていたそうだ。今は随分容姿も変わったから驚かないでね」

 看守に案内されて魔法師が番をしている。檻の前についた。
 独房の中央にある大きな椅子に座らせられた女性を見てレティシアは驚愕した。

「髪の色……」
 
 下の方は染めた金髪が残っていて、付け根は白髪のなかに黒髪が入り混じっていた。レティシアははっとして隣にいるリーンハルトの腕を掴む。義弟はつらそうな表情を浮かべていた。

「ミザリー」 
 リーンハルトが俯いたミザリーに声をかける。ゆっくりと顔を上げた彼女の顔は、老婆のようにしわが刻まれていた。しかし、その表情はまるで童女のようで。レティシアは恐ろしくてあとずさりした。

「リーンハルト。来てくれたのね」
 
 何度か来ているリーンハルトの事は憶えたようだ。ミザリーが子供のような笑みを浮かべ、舌足らずに喋る。しかし、その声はやはり老女のようにしわがれていた。
 呪殺に失敗した彼女は死ぬ代わりに老化し大半の記憶を失っていた。

「ああ、こんにちは」

 リーンハルトがこわばった笑みを浮かべる。ミザリーがしわの刻まれた落ちくぼんだ目をレティシアに向けた。その視線はどろりとしたねばっこいもので。

「ねえ、リーンハルト、その女なに?」

 声に含まれる憎悪にぞくりとする。
 
「私は、レティシア、今日はあなたに聞きたいことがあってきたの」

「いや、お前とは話さない! リーンハルトがいい」

 ミザリーはふくれたように横を向く。そしてリーンハルトに視線を戻す。

「ねえ、リーンハルト、私とその女どっちが綺麗? どっちが好き?」

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