冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 確かに今回レティシアの周りに常にいたのは、エレインにアランそれにリーンハルト。善良で、凡そ負の感情とは無縁の人ばかりだ。それならば、トレバーは心に大きな闇を抱えていたのだろうか。 今では知る由もない。これからも絶対に近づくことはないだろう。

「せっかく結婚できたのに。それからあとのループでも極力ミザリーとは接触しないようにしたのに恨まれて呪われて。ほんと分からない」

 レティシアとしては、やるせない思いだ。

「今回でミザリーは返り討ちにあったけれどね」

 リーンハルトが淡々と言う。しかし、きっと複雑な思いを抱えているのだろう。
 レティシアとしてもどうにもすっきりしない。

「気に入らないっていうだけで、あんなリスキーなことをするとは思えないわ」
「そうかな? 俺は充分あり得ると思うけれど」

 リーンハルトも食欲はなさそうで機械的にサラダを口に運んでいる。

「どうして?」
「もっと前からレティシアはミザリーに恨まれていた。十三歳より前に」
「なぜ、そう思うの? それにそれならばどうして戻ったのが十三歳だったの?」

「それはおそらくアーティファクトの能力によるものだろう。戻る時間を選んでいるわけじゃない。決まっているのだと思う」
 レティシアは十三歳以前を思い出す。

「十三歳より前ならば、私はミザリーにべったりくっついていたわ。家族の誰とも上手くいかなくて」
「そこなんだよね。確かにレティシアは警戒心が強かったけれど、来たばかりの頃は上手くいきかけていたんだ。それが急に様子が変わって。
 やはり、俺はミザリーがレティシアに対して理不尽な恨みを持っていたのだと思う。悪意に理由なんかないんだよ」

 そう言うと彼は洗練された所作でナプキンで口元を拭う。懐から箱を出すと、そこから美しい石を取り出した。

「何それ?」
「ちょっと手を出して」

 リーンハルトに言われるままにレティシアが手を出すと、手のひらに白く月のような色をたたえた丸みのある石を乗せられた。リーンハルトが石をのせたレティシアの手を包み込む。
「どうしたの急に?」
 どきりとしてレティシアは赤くなる。

「いいから。今からレティシアの抑圧された記憶を見に行くんだ。この石が手助けになる。アミュレットみたいなものだよ。バートン先生から借りて来た」

「よくわからないけれどやってみる」
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