冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
(それは礼儀にかなっているの? 舌打ちはいけないと注意していいのかしら?)

 レティシアの頬がひくりとする。

「だいだい、恩返しって……、父上も母上もそんなことのために、お前を引き取ったと思っていたのか?」
「え?」
「出ていけ」

 リーンハルトの射貫くようなまなざしに震えあがった。何で怒ったの?

「今何時だと思っている。二度とこんな時間に部屋を訪ねて来るな」

 一つ下の義弟に叱られる。「だって、こんな時間しか話ができないじゃない」という言葉は飲み込んだ。

 レティシアは、とりつく島もなく追い出された。やはり、犬猿の仲の義弟から、情報を引き出すことなどできなかった。

 そういえば、リーンハルトがレティシアに詫びたことはあったけれども、レティシアは彼に詫びたことはない。一度でも彼に謝っておけば印象が違ったのだろうか……。あの時彼の頬につけた傷はもう消えていた。
 
 多分、そういう事なのだ。レティシアは決して被害者だったわけではない。

 過去にずっと自分をかわいそうだと思っていたことが、恥ずかしい。



 ◇

 レティシアは思う。二度もミザリーに殺された。悔しいし、できるならば、同じ痛みを味わわせてやりたい。だが、頭の良いミザリーに勝てる気がしない。二度ともまんまと出し抜かれているのだから。
 
 いまだってあの澄んだ薄茶色の瞳と、優しい笑顔に騙されそうになる。

 殺されないためには、早くこの家を出て行くしかない。そして何らかの方法で彼女とは関係を断つ。やられっぱなしなのが悔しいが、生きることを諦められない。

 翌日レティシアは初めて家の書庫に足を踏み入れた。三回目の人生で初めてだ。
 圧倒されるほどの本の数、時間をかけてやっと魔導書がずらりと並ぶ書架を見つけた。本の背表紙ならば、難しくても何となく読めると思ったが甘かった。

 それに、数があり過ぎてどれを選んでよいのか分からない。その上この家には閉架という隠し書庫もあるという。さすがにそこには入門書などないだろう。
 
 迷っているのも時間の無駄なので、片端から読むことにした。手当たり次第に見て行けば、読みやすい本が見つかるだろう。

< 30 / 159 >

この作品をシェア

pagetop