貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
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幸せな気持ちになる一方で、給湯室で飲みに誘われたあの日から今日までのことを振り返ってみると、やはり要所要所で紺野洋子の存在が大きな意味をなしていたことに気がしてくる。

散々な目にはあったけれど、紺野洋子にはある意味では感謝しなければいけないのかもしれない。

思わずそんなことを呟くと、神山透はものすごく嫌そうな顔をして「なんでですか?」と言うものだから、慌てて「神山さんにとっては思い出したくない出来事なのに、そんな事を言って申しわけない」と取り急ぎ謝ってみる私である。

けれど、紺野洋子があの日、神山透を泥酔させてホテルにつれこまなければ。あの時彼女が給湯室で下世話な噂話をしていなければ。
「たられば」の話にはなってしまうが、彼女がああいった行動を起こさなければ、私と神山透がこんな関係になることも、恐らくなかったはずなのである。
そう説明すれば、イケメンはいよいよムスっとした顔をする。

「でも今回のことがなかったとしても、僕はそのうちきっと、山本さんのことを好きになったんだと思いますよ」
「でも……」

私の声を遮るように、神山透は「まあ確かに、紺野さんのおかげと言えばおかげかもしれませんけどね」と言いながらも、話を続ける。

「今まで個人的に話をすることが無かったから好きにならなかった、って話なだけじゃないですか。僕は山本さんとちょっと会話を始めたら、すぐに恋に落ちちゃった自信がありますよ」

それくらいあっと言う間に好きになったんですから。あの、初めて二人で行った居酒屋でお喋りしていた時からもうずっと、山本さんと距離を詰めたくて仕方なかったんですから。

そんなことを言いながら、神山透は私の頭や耳にキスの雨を振らせてくる。

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