貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
どの階にも停まることなく、二人きりの空間は続いていく。フワフワと体の内側が浮遊するようなこの感覚は、エレベーター内の特有のものか、はたまた先程のキスの影響か。
終点が近づき1階の文字が点滅すれば、神山透は繋いだ手を唇に這わせてからそっと手を離し。

「この続きはまた別の機会に、ですね。」

いたずらっぽく耳元で囁くと、扉が開くと同時に「それではまた今夜」と、颯爽とイケメンはエレベーターを出ていくのだった。
その余韻を残した引き際の見事さよ。
悔しいけれど一連の仕草に見惚れてしまい、すっかり調子が狂ってしまった私である。
そんな訳でまんまと本日の争奪戦に破れ、昼食は棚に売れ残ったおにぎりとなってしまったのだった。

< 67 / 144 >

この作品をシェア

pagetop