貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
通勤ルートの電車を逆方向から乗り込んだ私達だが、日中ましてや休日にこの路線を利用することなんてほぼ無いので、いつもより空いている車内も周囲の景色も、初めて見るような錯覚を覚えてしまう。

車窓からいつも見ていた公園の噴水も昼の光に照らされて通勤時よりもキラキラ輝いている。
その周りには沢山の親子連れが夏にはまだ少し早いだろうに水浴びなんかもしていたり。

神山透もそれに気がついたようで、どこか柔らかい表情でその様子を眺めている。

「噴水、キレイですね。いつか子供が生まれたりしたら、あんなところに遊びに連れて行くのも良さそうですよね」

繋いた手をきゅっと握りしめると、そんな事を言うのだった。

そうか、神山透もいつか誰かと結婚して、子供が生まれてパパになったりするのだな。

今の話に深い意味などないとは思いつつ、改めて神山透からそんなことを口にされるとツキンと胸が痛くなり、なぜかちょっと泣きそうになってくる。

「この辺りは高級住宅地なんで、あちこちに公園があるみたいですよ。緑の多いところに住めるのはいいですよね」

けれどそんな一瞬の感情の揺れを悟られたくない私は、同じ景色を見る振りをして適当に相槌を打ってみるのだった。

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