有り ふれた 人生

お祝い


二人のお家に時間を分けて
お邪魔した。

由季と大輝さんの子供は
西森 四季(にしもり しき)君
綺麗な顔をしている男の子

大輝さんも鼻の下が伸びている。

由季の両親も、とても喜んでいた。
もちろん、西森のご両親も。

クアラ・ルンプルで買ってきた
お祝いを渡す。
日本とは違う物だから
よいかな?と思って。

由季は、
「いつ、日本に帰ってくるの?」
と、心配しながら訊ねてくれたが
「しばらくは、クアラ・ルンプルに
居ようかと思っているの。
家には陽平いるし。」
「ええっ、あっちに永住とかないよね?」
「それも、よいかな?と。
すっごく良いとこよ。
一度遊びに来てよ。」
と、言うと
「佑未。」
と、心配顔の由季に
「大丈夫だよ。
あの頃の私ではないから。」
と、言うと
少しだけ、ホッとした顔を見せてくれた。

「また、来るね。
おば様、大輝さん
お邪魔しました。」
と、言って実奈の家へと向かう。


実奈と一晃さんの赤ちゃんは
寺尾 夢(てらお ゆめ)ちゃん
とってもかわいい顔をしている。

実奈と一晃さんにも
心配されたが
由季に言った事と同じ事を
二人にも伝えた。

日本にいる二週間の間
私は由季の家と実奈の家に
入り浸っていた。

だって、四季君も夢ちゃんも
あまりにもかわいくて。

アイダン医師には、定期的に
連絡をいれていたが
靑とは、連絡を取っていなかった。

別に嫌ったわけではない。
煩わしいとも思っていない

だけど·····

こちらから連絡はしていない。
靑からは、ラインと着信があって
いるが。
返す事もしていなかった。

日本へ帰国することは、
アイダン医師から
髙山さんが来たら伝えて欲しい
と。

あっと言う間に10日が過ぎ
ふらりと立ち寄ったカフェ

シャメのカフェ。
席に座り コーヒーを注文する。

店内をグルリと見渡すと
飾られてある写真に目が止まる。

人と人の間に
よれた服にボサボサの頭の
藤吾が見えた。

歯科医として働いていたら
そこそこには給与も
頂けるし
あっ、でも子供さんが生まれたからか?

私が気にする必要はない。
と、思いカフェをでると
「佑未?」
と、声をかけられ
振り向くと藤吾?
「やっぱり佑未だ。
佑未は、かわらないね?」
と、言う藤吾に
私の顔は、怪訝の顔だったと思う

「びっくりしただろう?
俺の姿に。
彼女、清家 静香さんは、
俺と結婚出来たら
安定した贅沢な暮らしが
出来ると思っていたらしい。
おかしいよね
離婚にかかる費用や
歯科を一つ失くした
損失額などわかってなくて
どうして、こんなに苦しいの?!
って。
子供が産まれたら余計に
苦しくて。
やはり、歯科医としての
信用も無くなり
働き先も転々とね。
彼女は、養育費だけ払って
と、言って
サッサと実家に帰って行ったんだ。
なんだったんだろうね。
俺は、まんまと騙されて
全てを失って······」
と、ボロボロの泣く藤吾に。

呆れるやら
情けないやらで
「しっかりしなさいよ!!」
と、怒鳴ると
藤吾は、びっくりしながら
涙を拭く。
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