俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
「大輝はやめておきなよ。顔はかっこいいけど冷たいし、怒ると怖いし」

「あの、別に私は御杖部長がどうこうとかそういうことではなくてですね――」

 これから仕事を一緒にするのに変に誤解されては困る。もちろん正直に一度寝ました、なんて言えない。

「ちなみに、僕なんかおすすめ。イケメンで優しいよ」

「フフッ、ご自分でおしゃるんですね」

「そう、これでも営業は得意なんだ」

 おどけて見せる態度に、噴き出してしまった。

 到着したエレベーターには誰も乗っておらず、そのまま会話を続ける。

「おふたりは、プライベートでも仲がいいんですか?」

「あぁ、中学が同じだったんだ。高校からは大輝はアメリカだったから別だけど」

「え、そんな昔から」

 ふたりの親密なやり取りもうなずける。

「向こうは腐れ縁って言ってるけど、なんだかんだ仲いいと思ってる。僕は」

「なんだか正反対にみえるんですけど、不思議ですね」

「言うね~飛鳥ちゃん」

「あ、すみません。調子にのりました」

 相手は上司と取引先の社長だ。本来ならばこんな気やすく接していい相手ではない。

「気にしないで。君とのおしゃべりは楽しいから」

 軽いけど懐は深い人のようだ。その上御杖部長が言うくらい仕事ができる人。

「あの、パーティの件ですが。ご迷惑をおかけしないようにしますので。よろしくお願いします」

「うん、俺がついてるから安心して」

 野迫川社長がにっこり笑った瞬間、エレベーターが地下駐車場に到着した。

「送っていくよ」という野迫川社長の申し出を丁寧に断り、私は社員通用口を通って駅に向かった。

「はぁ、今日はなんだかいろいろあったな」

 ふと御杖部長のお見合い相手の写真が頭の中に思い浮かぶ。さっきからこの件のことになると、なんだか胸がどんよりするのはなぜだろうか。

 自分自身理解できない気持ちを持てあましながら、私は家路についた。
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