俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
「いやー、お疲れ様! いやよくやってくれたね。ありがとう」
私は両手を広げて迫って来る野迫川社長をゆっくりと交わすと「ありがとうございます」と折り目正しく頭を下げた。
「なに、冷たいなぁ。そういうところが好きなんだけど」
全然へこたれない様子を見て思わず吹き出しそうになる。イケメンなのに本当にもったいない。
「でも、ずいぶん無理いったのによくやってくれた。ありがとう」
野迫川社長を見て、やっと今日のパーティが成功したのだと実感でき、心の底かほっとした。
彼を正面玄関まで見送ると、これまでで一番ウキウキした気持ちで事務所に戻る。
「飛鳥、おつかれ」
「あっ、御杖部長。おつかれさまです」
後ろから声をかけられて足を止めた。
「途中で少し様子を見にきたが、よくやったな。まぁ、ダメなところも山ほどあるけど」
「今とてもいい気分だったのに、ひどいです」
私が唇を尖らせると、はははと笑った。
怒ったふりをしているけれど、内心はものすごく喜んでいる。彼の期待に応えられたのがうれしい。
「御杖部長今日は、本店での仕事でこちらには来ない予定になっていましたよね。もしかしてわざわざ私に――」
「そんなはずあるかよ。忘れ物しただけだ」
彼は手にしているクリアファイルで私の頭をぽんと叩いた。
それもそうだ。わざわざ見に来なくても失敗か成功かは野迫川社長に聞けばすぐにわかることだ。
「今日くらいは早く帰れよ。じゃあ」
「はい。お先に失礼します」
私が頭を上げたとき、彼はすでに廊下の先を歩いていた。
まあ、わざわざ私をねぎらいに来るはずないよね。忙しい人だし。
でも偶然でも会えて、声をかえられたことがうれしかった。もちろん野迫川社長に褒められたのもうれしかったが、それとはまた違う喜びを感じた。
うきうきした私はその場で大きく伸びをした。
「今日はご褒美にラーメン食べに行っちゃおう」
腕時計を確認して、私は事務所に荷物を取りに行った。