俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 身に覚えのないことで私は反論すらできずに、まっすぐに自分に向かってくる非難の言葉を受け傷つくことしかできない。

 これまでできないなりにも一生懸命やってきた。経験や知識が乏しいぶん、新郎新婦に寄り添い耳をかたむけてきたつもりだったのに……。

 悔しさで涙がにじむ。

「飛鳥さん、しっかりしなさい」

 小さな声で天川課長に諭され、私はプライドでなんとか涙を耐える。

「優を返して! 彼は私のものなんだからっ!」

 金切り声がサロンに響く。すると入口からひとりの男性が飛び込んできた。林さんだ。

「優! まさか、あなたが呼んだの? 今日会う約束していたの?」

「いいえ、まさかっ!」

 さすがにこれ以上誤解されてはたまらないと思い、思い切り否定する。

「美和、君はこんなところで何をやっているんだ?」

 林さんがやってきたことによって誤解がとけて事態が収拾すると思い、私も天川課長もわずかに緊張を解いた。しかしそれが間違いだとすぐに気がつく。

「飛鳥さんを困らせるな。彼女が僕の大切な人だ」

 私は彼の言葉に目玉が飛び出るほど大きく目を開いた。天川課長も驚いたらしく私の方を見ている。

 山口様は目に涙をためて、信じたくないというように顔を左右に振っている。

 何でこんなことになってるの!!

「何をおっしゃっているんですか! 林様の大切な方は山口様じゃないですか!」

 さすがにもう黙っていられないと思い、口を開く。ふたりで将来を誓い、半年後に式を挙げるはずだったふたりに何があったのだろうか。

「飛鳥さん、そんな寂しいこと言わないで。だって君は、僕に笑いかけてくれたじゃないか。優しく話しかけてくれたし」

「それはお客様にはみな、そのようにしております」

 まさかただの接客で誤解をさせてしまったようだ。

「そんなに照れなくてもいいよ。君だっていつも僕にほほえむじゃないか」

 そう言いながら見せられたのは、彼のスマートフォンだった。そこには山口様のが見せたのと同じような写真が、驚くほど大量にあった。

「……っ」

 ここがサロンでなければ悲鳴を上げていたかもしれない。

 怖くなった私は、思わず天川課長の腕にしがみついた。

「おふたりとも今日のところはお引き取りいただいて――」
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