俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 今朝の部屋の状況を思い出して、とんでもないと断る。

「それなら、うちに来るしかないな。俺はどっちでもいいが」

 私に選択肢などなかった。

「う……よろしくお願いします」

 私が頭を下げると、御杖部長が顔を緩ませた。

「じゃあ、荷物を取りにいくぞ」

 私が返事をする前に、彼は車をさっさと降りてしまう。彼は部屋に来るつもりだろうか。

脳内には昨日から干したままの下着や、朝飲んだコーヒーのマグカップ、それに出社ぎりぎりまで資料作りをしていたので、参考にしていた雑誌の切り抜きがあちこちにちらばっている。

 そのような惨状の場に彼を入れるわけにはいかない。私は急いで車を降りて車を降りた彼を引き留める。

「御杖部長、部長はここでお待ちください」

「はぁ? この俺が荷物持ってやるって言ってるんだ。ありがたいだろ?」

「いやもうこれまでで十分です。ですから――」

「遠慮するな」

「いや、だから! 下着干してたり、部屋が散らかってたり、見られたくないんですっ!」

 なりふりかまっていられず、私は必死になって事実を告げた。

 彼は最初驚いたうように目を見開いていたが、次いで声を上げて笑い出した。

「あはは、そっか。そうだよな。悪い悪い」

 思い切り笑われて私は羞恥心で顔を赤くする。

「そんなに、笑わなくてもいいじゃないですか。急だったんだから仕方ないでしょ」

 唇を尖らせる私を見て、彼はお腹を抱えて笑っている。

「じゃあ、ここで待っているから。準備してこい。あ、携帯はすぐに使えるように手にもっておくように」

「はい。いってきます」

 私は御杖部長に見送られて、マンションの部屋に荷物を取りに戻った。

 散らかったままの部屋に目をつむり、必要最低限のものを持ちだす。

「スマホの充電器に、パソコンのも必要か。後は化粧道具に数日間の洋服……あ、下着も!」

 窓際に干してあった渇いたばかりの下着を巾着に放り込んでいく。あれこれ考えてしまうと手が止まりそうだ。今は無心で作業するほうがいい。

 頭を空っぽにした私は、必死になってバッグに荷物を詰めた。

 部屋の施錠をしっかり確認してエレベーターホールに出て驚いた。壁にもたれてスマートフォンを操作しているのは間違いなく御杖部長だ。

「お待たせしてすみません。車で待っていただいてよかったのに」
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