俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 急いだけれどそれなりの時間はかかった。いったいいつからここで待っていたのだろうか。

「マンションの共用部だからって安心できないだろ。アイツはこの部屋も知ってるだろうから」

「あ、たしかにそうですね」

 私の危機感のなさに御杖部長は呆れた顔をする。

「すみません」

「いや。ほら、荷物貸せ」

「あっ――」

 上司に持たせるなんてダメだと思いつつ、彼はさっさと到着したエレベーターに乗り込んでしまった。私は慌てて後を追うようにして乗り込み、一階のボタンを押した。


 私のマンションから車で約二十分ほどで、御杖部長のマンションに到着した。セキュリティ万全の豪華な入り口に思わず尻込みしてしまう。

「あの、ここは、私のような庶民が足を踏み入れても平気なのでしょうか?」

「は? 別に問題ない、俺の部屋に誰を住まわせようが、俺の勝手だ」

 こともなげにスタスタとエントランスを歩いていく、カウンターにいたブラックスーツの男性ふたりが「おかえりなさいませ」と頭を下げている。

 私はまるでホテルのような出迎えに、そわそわしながら軽く頭を下げて御杖部長の後に続いた。

「そもそも十戸もない建物だから、住人も多くない。身元もしっかりした人ばかりだから安心して。部屋は三階」

「はい」

 エレベーターはすぐに到着して驚いた。目の前のガラスの向こうには芝生が植えられており木や鉢植えが並んでいた。

「庭があるんですか?」

「あぁ、一度も出たことないがな。このフロアはうちの一軒だけだから好きに使えばいいさ」

「えっ、このフロア全部?」

 続く廊下を見ると、確かに入り口らしき扉はひとつしかない。自分の想像をはるかに超えた豪華さにくらくらする。

「ほら、早く来い」

 はっとして声の方を見ると、彼はすでにドアを開けて私を待っていた。

「はい、すみません」

 あわてて中に入り、先を歩く御杖部長の後に続く。案内されたリビングに入った私はまたもや驚きの声をあげた。

「すごい」

 言葉を漏らした私は、キョロキョロとあちこちを見渡す。

 三十畳以上はあるリビングダイニング。奥に見えるキッチンだけでも私のマンションの部屋よりも広い。

 全体的に綺麗に片付けられている……とうより、物が少ない。

 目立つのは壁一面に並んだ本棚にはたくさんの本が並んでいるくらいだ。

 私の部屋とは雲泥の差だわ……。
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