俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 急いで準備をしたので余計に散らかった自分の部屋を思い出してげんなりする。

「疲れただろ、とりあえず風呂はそっち好きに使って。後寝室は向こうだから」

「はい、あの御杖部長は?」

「俺はまだ片付けないといけない仕事があるから、あっちの部屋にいる。キッチンや冷蔵庫の中身も好きにしていいから。とりあえず休め」

 御杖部長は言い残すと、寝室の隣の部屋に入っていった。

 主よりも先にお風呂をいただくのは気が引けるが、今日は本当に色々なことがありすぎて心身ともに疲れている。

 お言葉に甘えさせてもらい、私は豪華なバスルームを堪能して、体が温まり少し緊張がとけた状態で寝室だと言われた部屋に向かった。

「わぁ、ここもすごい」

 絨毯や、ファブリックはおちついたチャコールグレーで統一されており、ダウンライトの明かりも黄色味がかっていてゆったりと過ごせる空間になっている。

 しかもそこにはかなり大きなベッドが置かれている。

「すごい、キング? クイーン? どっちの方が大きいんだっけ?」

 普段めったに寝ないサイズのベッドだ。もはや大きささえわからない。

「さすがヘイムダルホテルの御曹司ともなると、客人にこんなに大きなベッドを用意するんだ……あぁ、最高」

 フカフカのベッドの誘惑に勝てずに、ごろんと横になる。良い感じで体が支えられて、思わずゴロゴロと堪能する。

「いや、こんなことしてる場合じゃなった。寝なきゃ、明日も仕事なんだから」

 日付はすでに変わってしまっている。一秒でも早く眠りにつきたいと私は布団に入り目をつむった。

 最高級であろうベッドが、私の体を包み込み眠りにいざなった。



 後ろから誰かの足音が聞こえる。早足で歩けば早くなり、ゆっくり歩けば足音もゆっくりになる。

 間違いなく誰かが私を追ってきている。逃げなきゃ、と本能のまま走り出す。しかし足音は離れるどころかどんどん近くなってきた。

 息があがって苦しい。けれどここで足を止めたら相手につかまってしまう。そのとき私の肩に手がのせられた。

「きゃぁあああああ」

 大きな声を上げた私の耳に「飛鳥、おい、飛鳥」と聞こえる。しかし私は拒否するように首を左右に振った。

「未央奈!」

 至近距離で名前を呼ばれて、ハッとして目を開ける。そこには心配してこちらを覗き込む御杖部長の顔があった。

「あ、あの……私……」
< 49 / 112 >

この作品をシェア

pagetop