俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
混乱しているなか、彼の唇が離れた。顔はまだ新近距離にあるが、視線は扉前に立つ野迫川社長に向けられている。
「あいかわらずだな、ノックくらいしたらどうだ?」
その言葉でキスの意味が理解できた。日頃から野迫川社長はノックはしても返事は待たないのを彼は知っていたのだ。
その上で、いいタイミングを見て私にキスをした。
もちろん野迫川社長に見せつけるために。
理由が分かった途端に胸の中にもやっとしたものが渦巻く。
見せつけるために自分のキスが利用されたことに対してだ。
だけど……それは最初からそういう話だったので怒るわけにはいかない。むしろこんな感情を抱く権利さえないはずなのに。
「いや、おいオフィスでそういうのはやめろよ。俺だからよかったものの、他の奴だったらどうするつもりだ?」
「返事もないのに、扉を開けるのはお前くらいだ。それに終業時間は過ぎている。問題ない」
彼が私の腰を離したので、わずかに距離を取る。さすがに野迫川社長の前でこれ以上イチャイチャさせられるのはごめんだ。
今後の仕事中にどんな顔をすればいいのかわからなくなる。
「わかったから、そんな怖い顔で見るなよ。なるほどな」
野迫川社長は、私と大輝さんの顔を順番に見て納得したようだ。
「見合いを断った理由はわかった。あんな好条件なのにもったいない」
そんなにいい話だったのだろうか。彼の父親の意向も入っているのに、断って大丈夫だったのかと彼の方を見るが、いつもと表情は変わらない。
「条件だけで結婚するなんてごめんだ」
「まぁたしかに。飛鳥ちゃんと一緒にいた方が楽しそうだけど。えー俺も狙っていたのに残念だなぁ」
私の方に意味ありげな視線を向けてくる。そんな彼の視界から遮る殻のように、大輝さんは私を自分の後ろに隠した。
「ダメだ、未央奈はすでに俺と結婚の約束を交わしている。つけ入る隙はないぞ。こいつは俺に心底惚れてるからな」
〝なに言ってるんですか!?〟という言葉をすんでのところで飲み込んだ。
その代わりに私は背後から彼のスーツのベント部分を引っ張って抗議する。
しかしまったくもって彼は気にもしていない。
それどころか、ちらっと私の方を見て「すぐに終わるから、待っていろ。な」と優しい声色で話して見せた。
どこまで演技上手なのよ。
「あいかわらずだな、ノックくらいしたらどうだ?」
その言葉でキスの意味が理解できた。日頃から野迫川社長はノックはしても返事は待たないのを彼は知っていたのだ。
その上で、いいタイミングを見て私にキスをした。
もちろん野迫川社長に見せつけるために。
理由が分かった途端に胸の中にもやっとしたものが渦巻く。
見せつけるために自分のキスが利用されたことに対してだ。
だけど……それは最初からそういう話だったので怒るわけにはいかない。むしろこんな感情を抱く権利さえないはずなのに。
「いや、おいオフィスでそういうのはやめろよ。俺だからよかったものの、他の奴だったらどうするつもりだ?」
「返事もないのに、扉を開けるのはお前くらいだ。それに終業時間は過ぎている。問題ない」
彼が私の腰を離したので、わずかに距離を取る。さすがに野迫川社長の前でこれ以上イチャイチャさせられるのはごめんだ。
今後の仕事中にどんな顔をすればいいのかわからなくなる。
「わかったから、そんな怖い顔で見るなよ。なるほどな」
野迫川社長は、私と大輝さんの顔を順番に見て納得したようだ。
「見合いを断った理由はわかった。あんな好条件なのにもったいない」
そんなにいい話だったのだろうか。彼の父親の意向も入っているのに、断って大丈夫だったのかと彼の方を見るが、いつもと表情は変わらない。
「条件だけで結婚するなんてごめんだ」
「まぁたしかに。飛鳥ちゃんと一緒にいた方が楽しそうだけど。えー俺も狙っていたのに残念だなぁ」
私の方に意味ありげな視線を向けてくる。そんな彼の視界から遮る殻のように、大輝さんは私を自分の後ろに隠した。
「ダメだ、未央奈はすでに俺と結婚の約束を交わしている。つけ入る隙はないぞ。こいつは俺に心底惚れてるからな」
〝なに言ってるんですか!?〟という言葉をすんでのところで飲み込んだ。
その代わりに私は背後から彼のスーツのベント部分を引っ張って抗議する。
しかしまったくもって彼は気にもしていない。
それどころか、ちらっと私の方を見て「すぐに終わるから、待っていろ。な」と優しい声色で話して見せた。
どこまで演技上手なのよ。