俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
まるで自分のことを本当に好きなのではないかと、錯覚しそうになる。年齢なりに恋愛をしてきたつもりだったのに、ことあるごとにときめいてしまう胸をどうにかしたい。
互いのメリットのために、大々的に婚約者であるふりをしなくてはならない。だからこの茶番にも真剣につき合わなくてはいけないのだ。
私はあきらめてぼろが出ないように、彼の背後に隠れていることにした。
「はぁ、ふたりの関係については〝俺は〟理解した。だが、先方や俺の依頼主が納得するかどうかはわからない。板挟みはごめんだからうまくやってくれよ」
声色から落胆と面倒なことになったという気持ちが痛いほど伝わってくる。
騙している手前申し訳なく思い顔をのぞかせると、ばっちり目が合った。
「飛鳥ちゃん、大輝が嫌になったらいつでも俺のところにおいで」
にっこり笑った野迫川さんはそんなに困っていないようでほっとする。
「だから、俺相手に嫌になるはずないだろ」
「お前はわかってないな。そういうところだぞ! 邪魔しちゃ悪いから帰る」
野迫川さんは大輝さんに指をつきつけて、扉に向かって歩き出した。そしてノブに手をかけながらもう一度振り向く。
「さっきも言ったが、親父さんと相手方に対してきちんとしておかないと面倒なことになるぞ」
その顔がそれまでとは違い真剣で、大輝さんに釘をさしているのだと私にも理解できた。
「わかっているさ、そのくらい」
大輝さんが軽く手を上げたのを見た野迫川さんは、ひとつうなずいてから部屋を出て行った。
ばたんとドアが閉まった後、私は大輝さんに尋ねる。
「お見合い断って本当によかったんですか? 先方はまだ乗り気なんですから、今からでも――」
「お前まで俺を結婚させたいのか?」
「えっ……」
「お前まで、俺を他の女と結婚させようとするのか?」
「それは」
痛いくらいの真剣なまなざし。私は一体なんと答えればいいのかわからずに、ただ口を開いたり閉じたりする。
本当は結婚して欲しくない? いや、そんなこと――。私が彼の結婚に、人生に口出しする権利なんてないのに。
『私には関係ない』と答えれば済む話なのに、どうしてもその言葉が口から出ない。その代わりに出たのは、ずるい言葉だった。
「どうしてそれを私に聞くんですか?」
真剣なまなざしを返す、彼もじっと私を見つめている。
互いのメリットのために、大々的に婚約者であるふりをしなくてはならない。だからこの茶番にも真剣につき合わなくてはいけないのだ。
私はあきらめてぼろが出ないように、彼の背後に隠れていることにした。
「はぁ、ふたりの関係については〝俺は〟理解した。だが、先方や俺の依頼主が納得するかどうかはわからない。板挟みはごめんだからうまくやってくれよ」
声色から落胆と面倒なことになったという気持ちが痛いほど伝わってくる。
騙している手前申し訳なく思い顔をのぞかせると、ばっちり目が合った。
「飛鳥ちゃん、大輝が嫌になったらいつでも俺のところにおいで」
にっこり笑った野迫川さんはそんなに困っていないようでほっとする。
「だから、俺相手に嫌になるはずないだろ」
「お前はわかってないな。そういうところだぞ! 邪魔しちゃ悪いから帰る」
野迫川さんは大輝さんに指をつきつけて、扉に向かって歩き出した。そしてノブに手をかけながらもう一度振り向く。
「さっきも言ったが、親父さんと相手方に対してきちんとしておかないと面倒なことになるぞ」
その顔がそれまでとは違い真剣で、大輝さんに釘をさしているのだと私にも理解できた。
「わかっているさ、そのくらい」
大輝さんが軽く手を上げたのを見た野迫川さんは、ひとつうなずいてから部屋を出て行った。
ばたんとドアが閉まった後、私は大輝さんに尋ねる。
「お見合い断って本当によかったんですか? 先方はまだ乗り気なんですから、今からでも――」
「お前まで俺を結婚させたいのか?」
「えっ……」
「お前まで、俺を他の女と結婚させようとするのか?」
「それは」
痛いくらいの真剣なまなざし。私は一体なんと答えればいいのかわからずに、ただ口を開いたり閉じたりする。
本当は結婚して欲しくない? いや、そんなこと――。私が彼の結婚に、人生に口出しする権利なんてないのに。
『私には関係ない』と答えれば済む話なのに、どうしてもその言葉が口から出ない。その代わりに出たのは、ずるい言葉だった。
「どうしてそれを私に聞くんですか?」
真剣なまなざしを返す、彼もじっと私を見つめている。