俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 大輝さんの落ち着いた声に、安達さんは観念したかのようにうなだれたたまま「はい」と返事をした。

 休憩をとった安達さんと、すぐ近くの自販機の明かりを頼りに話をする。

「式キャンセルになってすみませんでした。あなたはすごく親身になってくれていたのに」

 冒頭安達さんは私に勢いよく頭を下げた。

「謝らないでください。もちろん残念ではありますが、今は式のことよりも福原さんのことが心配なんです。ついこの間まで……ドレス……や、お花も……すごく、それに、安達さんの事、すごく好きだって私にまで……伝わるくらいで」

 あろうことか、大切な話をしている途中にもかかわらず、私は感極まって泣き出してしまった。そんな私を見かねた大輝さんが話を引き継いでくれる。

「なぜ婚約者に行方を告げずに、いなくなったんですか? 何か理由があるんですよね」

 こういう時の彼は相手の様子をよく見ていて、思わず話したくなるような声色と表情を見せる。

「あの……俺……」

 安達さんは突然嗚咽を漏らし始めた。悲しそうにしている彼の様子に私はつられてまた泣いてしまう。

「実は、結婚資金を友達に持ち逃げされてしまって」

「えぇ……そんな」

「小さい頃から知っている信用していたやつで、母親の入院費用が足りないからって。でもアテはあるからすぐに返済するって……でもあいつ逃げやがって」

 悔しそうにこぶしを強く握りながら、悔し涙を流している。

「情けなくて俺、彼女に合わせる顔がなくて。せめて金さえ用意できれば、謝りにいけるだろうって」

「それで工事現場で働いているんですね」

「昼の広告モデルだけじゃ、金用意するの無理なんで……慣れないんで怒られてばっかですけど」

 綺麗だった彼の手には無数の傷がついている。顔には疲労の色が浮かび、苦労しているのがうかがい知れた。

 安達さんにもちゃんと理由があった。福原さんと別れたくていなくなったのではいのだ。

「福原さんに連絡してください。彼女待ってます」

「でも、俺なんか――」

「たしかに、貴方のように逃げ回っているような男性に失望するかもしれませんね」

 いきなり大輝さんが冷たく引き離すような言葉を彼にぶつけた。言われた安達さんは唇をぐっと引き結び耐えている。

「大輝さん、なんてこと言うんですか! 彼にだって事情があって――」
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