俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 顔を上げて抗議しようとしたのに、キスでふさがれてしまう。本当は受け入れてはいけないのに、好きな人からのキスに抵抗できるわけなどなかった。

 何度か角度を変えるたびに濃厚になるキス。最後に下唇を軽く吸われたときに私の膝から力が抜けた。

「おい、このくらいでへばるなよ」

「でも……いきなりしてくるから」

「仕方ないだろ、俺お前のすねたり怒ったりしている顔が好きなんだ」

 女としてこれは喜んでいいのかダメなのか。でも彼が好きだと言ってくれているのだから素直に受け取ろうと思う。

「だからって、意地悪ばかり言わないでください」

「キスの許可はいらなかったはずだが」

「それはそうですけど」

 ふたりの気持ちが通じ合った後も、その約束は有効なのね。

「まあそのうち、全部の許可なんてとらなくなるだろうけどな」

「それは……おいおい、話し合いをして――」

 彼が何の許可について話しをしているのか気が付いた私は話を濁してこの場を収めようとする。

「話し合いなんかできるか。俺が我慢できない」

 さらっと危険なことを言った彼が、私の手を引いて歩き出した。

 しっかりと指を絡めて繋いだ手は私たちふたりの気持ちが通じ合った象徴のように思えた。

 歩いている間、ついついその繋がれた手を見てうれしくて頬が緩む。まるではじめて恋をしたときのような新鮮なときめきに胸がうずいた。

「なあ、お前。幸せそうなところ水を差して悪いが、林さんに安達さん。二軒も予約がキャンセルになったんだ。数字の穴埋めはできるんだろうな」

「あーん、忘れてたっ」

 急に現実に引き戻された私は悲壮感を漂わせて肩を落とす。

「期待してるぞ、俺の彼女なんだからできるところみせてくれ」

「ずるい。そう言われると私ががんばるのわかってるんでしょ?」

 目を細めて隣を歩く彼をにらみつける。

「おい、その顔やめろ」

「だって」

 そんなにひどい顔なの? でもそうさせたのはあなたじゃない!

 ますます機嫌が悪くなりそうな私に彼が言い放つ。

「またキスしたくなるだろ、かわいい」

「え、何言ってるの……」

 思わず顔を赤くした私を見た彼は本当に楽しそうに声を上げて笑った。

 そんな彼を見ていたら私も怒ってなどいられずに、連れられて笑ってしまう。

 夜の静かな公園に、私たちふたりの笑い声がこだましていた。
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