俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 そしていつもと同じように、大輝さんの部屋にふたりで帰る。いつもとなにも変わらない雰囲気に油断していた。

 彼が先にシャワーを浴び書斎で仕事を始める。それから私がお風呂をゆっくり使う。

 今日もいつも通りそうしていた。頭からシャワーを浴び、体を綺麗にして湯船につかる。

 お気に入りのバスソルトの香りに包まれながら「ふぅ」と大きく息を吐いて全身の力を抜いた。

「はぁ、今日も疲れた。ほんと毎日いろんなことがあるなぁ」

 肩に手を置いて、首を動かし凝り固まった体をほぐしていく。

「ん……いろんなこと……って、あ」

 そのときになってマヌケな私はやっと気が付いたのだ。今日はもしかして特別な夜になるのではないかと。

 いや、間違いなくそうなるはず。

 そう思いついたら心臓がバクバクしはじめた。

 嫌、はじめてじゃないんだからと自分に言い聞かせてみるものの、最初の日は勢いがあったし、素敵な人だとは思っていたけれど、思いが通じ合ってからこういうことをするのは、はじめてだ。

 戯れのようなキスはしていたけど、それとこれとはまったく違う。

「はぁ、どうしよ。緊張してきた」

 とりあえず湯船からでて、もう一度今度は念入りに自分の体を磨いた。

 湯上りもいつもよりも丁寧にスキンケアをして髪をとかした。すっぴんは見られてるし、何度も残念な泣き顔も寝顔も見られている。しかしそれとこれとは話は別だ。

 少しでも綺麗な自分をみてもらいたいというせめてもの悪あがき……いや、乙女心。

「これでいいか」

 ブラシを置いて鏡の中の自分を見る。少し緊張しているように見える。

 バスルームを出た私は、キッチンでコップ一杯水を飲むと覚悟をして大輝さんの部屋のドアをノックした。 

 コンコンと音が響いている。しかし中から返事がない。

 もう一度ノックしたが音沙汰なし。そっと扉を開いて顔を覗かせると、部屋の中は暗く誰もいない。

 あれ……もしかして、もう寝室で待っているのかな……。

 なんとなく想像してしまって、頬に熱が集まる。私は扉をそっとしめて深呼吸をした。
 
 そしてゆっくりと寝室に向かい扉の前に立つ。

 これほどまでここの扉を開けるのに緊張した日があっただろうか。

 これまでもベッドで一緒に寝ていたけれど、今日は寝る以上のことになる。

 覚悟とほんの少しの期待で、胸がドキドキしている。そっとドアノブに手をかけてゆっくり開いた。

「えっ……」
< 65 / 112 >

この作品をシェア

pagetop