俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 私は驚きで思わず声をあげた。寝室も真っ暗だったのだ。さっきまでの高揚していた気持ちがしぼんでいく。

 書斎にも寝室にもリビングにもいないとなると、彼は一体どこにいったのだろうか。

 そこからトイレを確認し、客間やウォークインクローゼットの中まで探した。しかし彼はいない。

 もしかして嫌になって逃げだした?

 いやいや、ほんの数時間で心変わりなんてありえない。そう思うけれど、彼がいないことで不安になる。

「もうどこ行っちゃったのよ」

 リビングのまん中で座り込んだ私の耳に、玄関の扉が開く音が聞こえた。私はすぐに立ち上がり、走って廊下に出る。

 リビングの廊下を開けて玄関を見ると、こちらを驚いた顔で見る大輝さんがいてほっとしたと同時に体の力が抜けその場に座り込む。

「おい、どうした?」

 うずくまる私のもとに彼が急いでやってきた。

「なんで、いないのよ。どこに行っていたの?」

 思わず責めるような口調になってしまった。しかし急に彼の姿が見えなくなって不安だったのだから許して欲しい。

「いや、何も言わずに外に出て悪かった。立てるか?」

 大輝さんの手を借りて、私は立ち上がる。彼に手を引かれてそのままソファに座らされた。少しして落ち着いた。

 考えてみれば彼が留守にしていた時間はわずかなのに、こんなふうに取り乱して恥ずかしい。

「あの、なんか大げさにしてごめんなさい」

「いや、ちょっとコンビニ行ってたんだ」

「こんな時間に? 明日でもよかったんじゃないんですか?」

 わざわざこの時間に買いに行くなんて。

「いや、明日じゃだめなんだよ」

 髪をかき上げた彼の額にはうっすらと汗が浮かんでいて、急いで戻ってきたのがわかる。

 そうなれば気になるのは彼が持っているコンビニ袋の中身だのだが。

 ちらっと視線を向けると、彼が大きく「はぁ」とため息をついた。

「気になれば見ればいいさ」

 開き直ったように渡されて、袋の中身を確認し四角い箱を見た私は「あっ」と短く言った後、気まずくてそのまま袋を突き返した。

「〝ない〟と〝できない〟だろ?」

「あ、うん。そうだね」

 恥ずかしくて耳まで赤くなっている自覚はある。ふたりの間に気まずい空気が流れる。

 ちらっと彼の方を見ると、私をじっと見つめていた。
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