俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
【今日の洋服、これ着た未央奈が見たい。間違っても部屋に服をとりに戻るなよ】

 なんでもお見通しなのだなと思い、届いた箱や袋を開けていく。

「わぁ、素敵」

 最初開いた箱の中からワンピースが出てきた。

 海の底を思わせるような濃紺の膝丈のドレス。チュール素材を使っているので、暗い色だが軽やかなイメージになっている。胸元から首まではレース素材になっていて、彼がつけたキスマークもうまく隠れる。

 もしかしてわかってこれ選んだの?

 そんなことを思いながら身に着けると、サイズもぴったりだった。

 リビングにある姿見の前でくるりと一回転して確認する。その美しさに自然とテンションもあがる。

 一緒に届いたほかの荷物は、ワンピースに合わせたパンプスやバッグだ。どれも素敵なもので、彼のセンスがうかがえる。

 何よりも自分の好みを押し付けるわけではなく、私が好きそうなものを選んでいるのがわかり、そのことが何よりもうれしい。

 とにかくもううれしくてしかたがない。私は部屋中のそこかしこを足取り軽やかに歩き回った。


 
 そして約束の十九時。私は彼に言われた通りタクシーで言われた住所に向かう。

 車止めを下りるとドアマンが扉を開けてくれる。中に入るとソファがあり大輝さんはすでに到着していた。

「お待たせしてすみません」

「いや、俺もさっききたばかりだ」

 彼が目配せをすると年配の男性スタッフがすぐにやってきて個室に案内された。

 普段ホテル内を歩くことが多いが、プライベートでは足を踏み入れない高級店だ。

 レストラン勤務が長かったこともあり、あちこち気になってしまう。どこを見ても欠点がなく素晴らしい。

 席について注文を済ませると、私は個室の中を興味津々で見始める。

「いいお店ですね。個室は出入口も他のお客さんから目につきづらいしレストルームも各個室ある。スタッフの距離感もすごくいい。見習いたいな。あっ……ごめん」

「ん?」

 自分だけ一方的に話をしてしまった。しかも色気もなにもない仕事の話だ。

「なんで謝る?」

「え、だって。一応これ、デートでしょ?」

「一応じゃなくて、もちろんデートだ。だから未央奈が楽しそうにしていることが一番大事」

「……ありがとう」

 いつになくストレートに甘やかされて、今この時間は上司と部下ではなくちゃんと恋人同士なのだと自覚する。
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