俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 御前には美しく盛り付けられた料理が並んでいる。夜なら一皿ずつ提供されるのだろうが、ランチ用にすべてが並んでいた。これはこれで食欲をそそる。

 旬の鱧の梅肉和えや、お造りの盛り合わせ、じゅんさいを使った酢の物など暑い時期でも美味しく食べられるもが多い。

「おいしいです。はぁ、幸せ。お昼からすごい贅沢です」

「まあ、これはお詫びだから」

「お詫び?」

 私は謝罪を受けるようなことがあったかと頭の中をめぐらす。

「ほら、あの例のストーカー事件」

「あぁ、アレですね」

 先日林さんが逮捕されたという話を大輝さんから聞いた。容疑は元婚約者に対する盗聴容疑と、暴力らしい。

「うちの審査が甘かったために、とんでもない顧客を紹介してしまった。すまない」

「それは野迫川社長が悪いわけじゃないですし。本気で隠されたら暴くのは無理ですよ」

「そうは言ってもね、女性側にももうしわけないことをした」

 野迫川社長の後悔をにじませる表情がめずらしく、なんと言って声をかけたらいいのか迷う。

「いや、もちろん飛鳥ちゃんにも怖い思いをさせて悪かった。大輝に殺されるかと思ったよ」

「いえ、あの……私は。彼が守ってくれたので。それよりも元婚約者の方のショックが大きいと思います」

 信じていた人に裏切られたのだ、その上警察沙汰なったとなると深い傷を負っただろう。

「人と人とは縁っていうけど、間違った縁を繋がないようにもっと注意をしなきゃな」

「あの、でも……私婚活パーティでも、挙式でもリンクスで結ばれた幸せなカップルたくさん見てますから! これからもっと幸せな人増やしていきましょう。一緒に」

 ちょっと偉そうなことを言った自覚はあるが、今の私のまっすぐな気持ちだ。

「私、ちょっとリッチロンドに戻ってブライダル事業をやるの楽しみになってきてるんです。ヘイムダルホテルとはコンセプトの違う、自由度の高い式にして、後婚約式とかも日本で取り入れても面白いなって……あ、大輝さんには言わないでくださいね。恥ずかしいから」

 うんうんと話を聞いていた、野迫川社長は私の手をとりぎゅっとにぎった。

「飛鳥ちゃん、ねえ。やっぱり君、大輝なんかやめて俺にしない?」

「え、何言って――」

「俺も君が良いよ、俺お買い得だよ、見合いさせようなんて親もいないし、あ……」
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