俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 可能性は0って言ったけど、もし大輝さんと別れるようなことがあったら? 

 想像して落ち込みそうになり、自分の頭の中の妄想をかき消す。

 そんなことない。考えないっ!

「はぁ~午後からもがんばろう」

 気持ちを切り替えて、脚を早める。

 じりじりと照り付ける強い日差しがまぶしく、歩きながら手をかざし目をすがめる。指の間から見た入道雲が夏本番の訪れを告げているようだった。


 その日の夜、私がベッドでごろごろとネットの海に身を漂わせていると、遅く帰って来た彼が寝室に顔をのぞかせた。

「ただいま」

「おかえりなさい。遅かったね。何か食べる?」

「いや、飯は食ってきた」

 彼はネクタイを緩めながら、ベッドにやって私の近くに腰かけた。

「なぁ、ちょっと話がある」

「ん? 何かありましたか?」

 少しむすっとしているように見えて、私は体を起こして彼の話に耳を傾けた。彼は私の前にスマートフォンを差し出し、画面をつきつけた。

「これ、どういうことだ?」

「ちょっと、画面が近すぎて見えない」

 距離をとって確認すると、私が今日ランチを食べている写真だった。

「これ、野迫川社長から?」

「そうだ、浮気の証拠を浮気相手が送って来た」

「浮気って、そんなはずないじゃないですか」

 私が焦って否定すると、大輝さんは目を細めてちらっと私を見る。

「どうだろうな、随分美味そうにしてるじゃないか」

「だって、食事はおいしかたから。それに林さんの件のお詫びって言われたら断れないじゃないですか」

 理由があっての食事だったのだと説明する。どうにか納得してくれないかな。

「あぁ、あの件か。まあ、向こうの落ち度もあるからな。しかし詫びるなら俺にだろ。後始末大変だったんだが」

 林さんの件については、大輝さんが知人を使ってあれこれ調べてくれ、警察と連携をとり解決に至った。彼が手配をしてくれたことを知ったのは解決してから。

 結局私への行為ではなく、元婚約者に対する犯罪行為で逮捕されている。

「忙しいなか、本当にありがとう。ほっとしてる」

 大輝さんの部屋で一緒に住むようになってからも、ひとりで出歩くときや仕事中も警戒心を持っていなくてはいけない日々はすごく疲れるものだった。

 先日やっと林さんが逮捕されたと聞いてやっと緊張の日々から解放されたのだ。
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