俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
「まだです。そういえばお腹すきました」

 色々と考えていて食事どころではなかった。しかしいつまでもくよくよしていても仕方ない。

「何か頼むか?」

「ピザがいい!」

 元気に答えた私に大輝さんが苦笑する。

「太るぞ」

「大丈夫、また明日から精いっぱい働くから」

 笑った私を見る彼の顔は、どこか少し寂しそうに笑っていた。

 注文をする彼の横顔を眺める。出向を終えるということは彼とも一緒に働けなくなるということだ。

 治まっていた感傷的な気持ちがふたたび沸き上がりそうになって、あわてて押さえる。

「私絶対マルゲリータね、バジルがたくさんのってるの」

「わかった。注文しておくから先に風呂はいってくれば? 変な寝方してたから体痛いだろ?」

「うん、じゃあそうさせてもらう。あ、もう一回言っておく。マルゲリータだからねっ」

「しつこい、わかったって」

 彼はタブレットを見ながら笑っている。

 仕事中は厳しいけれど、失敗もまた成功も彼はよく見てくれていた。困ったときは手をかしてくれたし、うまくできたときはいつもほめてくれた。

 それがなくなってしまうんだ。

 一緒に職場で働けなくなったとしても、私たちが別れるわけじゃない。

 職場が別々なカップルなんて世の中にはたくさんいるのだからと、自分に言い聞かせる。不安な気持ちを流すべく私はバスルームで少し熱めのシャワーを浴びた。

 翌日、私はヘイムダルホテルで休みをもらい、古巣であるリッチロンドにやってきていた。  

 最後嫌な思いをしながら出向先に向かった職場だったが、来てみればなつかしさを感じここも自分の居場所だったのだと思い出す。

 総務部長のもとに今後のことを聞こうと訪ねる。書類の一式を用意していてそれを受け取った。

「だいたいの流れはそこに書いてあるから確認して。わからなければいつでも連絡くれればいいから」

「はい。あの……どうしていきなり出向が取りやめになったのか教えてもらっていいですか?」

 私はどうしても理由が知りたくダメもとで話をした。

「まあ、振り回された君は、気になるよな。確かな情報ではないからオフレコにしてほしいんだけれど。表向きは業績不振で新規事業に手を出せないって話。けれど実際は違うみたい」

 私は先の話を聞きたくて黙ったままうなずいた。
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