俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
夜になってやっと日中の暑さから解放された。そんな中を私は待ち合わせの場所に向かって歩いている。
呼び出したのは私なのに、遅れるわけにはいかない。
ヘイムダルホテル最寄り駅から一駅先にある、外資系のホテルのカフェテリア。
日中とは違い暖色系のライトに照らされた店内は落ち着いた雰囲気で、話をするにはちょうどよかった。
店内を見渡すと、待ち合わせ相手がすでに到着しているのに気が付いて慌てて彼のもとに向かう。
「すみません。呼び出したのに、お待たせして」
「いいよ。好きな人を待つ時間も特別だから」
いつもと変わらない明るい野迫川社長の態度にほっとする。
「座って、何か注文しよう」
「はい」
にっこりと笑う彼につられて、私の笑みを浮かべた。
注文したものを待つ間、仕事の話や世間話をした。相変わらず話し上手で、私は本来の目的を切り出すタイミングを何度も見計らっては撃沈していた。
しかし私は意を決し会話を止める。
「あの!」
「何、もしかして。お腹すいた? 何か食べる? それとも店変える?」
しかしなかなか本題にはいらせてくれない。ここでひるむわけにはいかない。
「野迫川社長、少し話を聞いていただいてもいいですか?」
はっきり言い切ると、彼は手に持っていたメニューを置いてため息をひとつついた。
「その話、絶対聞かなきゃだめ?」
「はい」
「どうしても?」
「どうしても、です」
きっぱりと言い切ると、彼は観念したかのように椅子に一度座り直した。
「あの、私。やっぱり野迫川社長のところへはいけません」
「それは、仕事それともプライベート?」
「どちらもです」
目を見てはっきりと断る。彼もこちらを見ていて、その目はいつもの柔らかいものではなく真面目に話に耳を傾けてくれているのがわかる。
「それは……残念だな」
笑っているがいつもの笑顔とは違う。
どこか寂しそうなその笑みに、彼の私に対する気持ちが真剣だったのだと証明されているかのようだ。
だからこそ私も嘘やごまかしではなく、真摯に応えたい。
「野迫川社長の申し出は、私にとっては本当に魅力的で……きっと、いや間違いなく私を大切にしてくれると思います」
「それはもちろん、そうするつもりだよ。俺のものになるなら泣かせたりなんかしない」
きっと彼はその言葉を守ってくれる人だ。
「女としてはとても幸せなことだと思います。一般的には」
「一般的?」
野迫川社長が怪訝な顔で聞き返した。私は自分の気持ちを伝える。