※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

 紗良は通勤時間や昼休みの時間もすべて使い、片岡探しに奔走した。
 それでも、一向に手がかりすら見つからない。
 しかし、探し始めて十日後。紗良の諦めの悪さが功を奏したのか、ようやく進展があった。

 その牧場を発見できたのは本当に偶然だった。
 どうせ十勝近辺に行くことになるのなら美味しい物を食べたいし観光もしたいなと、紗良は牧場探しから一時脱線し下心満載で個人の旅行ブログを閲覧していた。
 ブログの閲覧を進めていく中で偶然見つけたのが”十勝スマイル牧場”という家族経営の牧場だった。
 ミルクジェラートと飲むヨーグルトが大変人気らしく、昼過ぎには売り切れてしまうという。
 経営しているのは六十過ぎの男性だが、牧場のホームページに掲載されている写真の中には三十代前半の日に焼けた青年の姿もあった。
 この人だと確信し、紗良は”十勝スマイル牧場”に電話を掛けた。
 その結果は翌日、静流に報告された。

「片岡が見つかった?」
「はい……。片岡さん、今はご実家に戻っているそうでご本人と連絡が取れました。静流さんのことをお話ししたらぜひ会いに来て欲しいそうです。静流さんさえ良ければ、来週行きませんか?宿と飛行機のチケットも手配します」

 静流はしばし何かを考え込んでいた。まさか本当に紗良が片岡を探し当てるとは思っていなかったのだろう。

「……わかりました」
 
 静流は熟考の末に、紗良の誘いを了承した。

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