※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
紗良と静流は軽トラの荷台に乗せてもらい、片岡に牧場の中を案内してもらった。
「わあ!!広い!!」
牛舎の向こうには案内板には記されていなかった牧草地帯が広がっていた。片岡の祖父母が入植し、切り開いたという牧草地は鮮やかな黄緑一色だった。ところどころ刈り取られた一角には大きな牧草のロールが作られている。あのロールが一年を通して牛の餌になるらしい。
「静流さん、見てください!!牛ですよ!!ほらあんなにたくさん!!」
牛舎の隣にある木製の囲いの中では牛の放牧が行われており、白黒模様の牛達が自由に動き回っていた。テレビでよく見る北海道の光景に瓜二つで、紗良はつい声を上げてはしゃいでしまった。……牧場に牛がいるのは当然のことなのに。
牧場内を一周し終わると、軽トラは売店までやって来た。
「ん!?美味しい……!!」
紗良は念願のミルクジェラートを食べさせてもらった。牛乳の味が濃厚なのに、それでいて口当たりはふわりと滑らか。北海道ののどかな景色と相まって、スプーンがとまらなくなる。
「売店の裏に工房があって、ジェラートとヨーグルトはうちの妹が作ってるんだ。ネット販売もやってるから、良かったらパンフレットもどうぞ」
「わあ……!!ありがとうございます!!ふふ。どれも美味しそうですね」
ホクホク顔でパンフレットに視線を落とす紗良とは対照的に静流は硬い表情で終始沈黙を貫いていた。ここまできたら紗良は傍観するしかない。頑張れと、心の中で静流を応援する。