※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「三船さんから連絡もらって驚いたよ。まさか、本当に来てくれるとは思ってなかった」
片岡がそう言うと静流ははじかれたように潔く頭を下げた。
「片岡、すまなかった……!!私が至らないばかりに……」
片岡は頭を下げる静流の肩を軽く叩いた。もういい気持ちはわかったと、言っているように見えた。謝られた片岡の方がなぜかバツが悪そうだった。
「俺こそ悪かった。殴った上に何も言わずに会社を辞めて……。あの頃、親父が倒れたばかりでここと東京を行ったり来たりでろくに話す時間もなかったんだ。俺も本当は高遠にずっと謝りたかった」
片岡から逆に謝罪された静流が瞠目する。
「冷静に考えれば高遠が他人の彼女に手を出すはずがないよな。昔から女にモテても困ったように断るお前が。元々、あいつとは結婚の話が具体的になってから上手く行ってなかったんだ。自分のせいで彼女の心が離れたのに、すべて高遠のせいにして押し付けた。逃げようとしたのは俺の方なんだ」
ほんの少し歯車が噛み合わなかっただけ。
壊れるべくして壊れた二人の関係の代償を静流が払う必要はないのだと片岡は暗に言っていた。