※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「もう気にするなと言っても、高遠はずっと引きずるんだろうな。だから逆を言う。大いに気にしろ。定期的に会いに来い」
「はは。さすが片岡だな……」
数年来の友人の片岡には静流のことはなんでもお見通しのようだった。遠慮のない言葉の数々は静流の心を確実に軽くしていった。
「会えてよかった。また来る」
二人は照れくさそうにしながら握手を交わし、互いに肩を叩き合った。お互いのわだかまりがすうっと消えていくようだった。
「三船さんもぜひ遊びに来てください」
「はい」
おまけのようについてきた紗良にまで片岡は気を遣ってくれた。
「あ、そうだ。帰る前に連絡先を教えてくれ。前に使っていたスマホは水没してデータが全部消えたんだよ。あいつとの思い出も綺麗さっぱり無くなってスッキリしたのはいいが、お前の連絡先まで消えちまった」
片岡は北海道の空のようにカラリと笑ったのだった。