※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「おはようございます、紗良さん」
「おはようございます……」

 いつものように静流から三十分ほど遅れて起きた紗良は寝ぼけ眼を擦りながら挨拶を交わし、朝食のテーブルについた。
 今日の朝食は和食だった。ご飯とお味噌汁に加え、納豆に味付け海苔。極めつけは甘めの卵焼き。出張や早出がないかぎり、朝食はほぼ静流が担当している。静流の好みなのか週に二日ほどは和食になる。
 紗良は箸を動かしながら、食後の紅茶についてぼんやりと考えた。

(今日は何の茶葉にしようかな……)
 
 電気ポットの電源スイッチは既に入れてある。毎朝お茶を飲むのならと、静流が朝食を支度するときに一緒にスイッチを入れてくれるようになった。
 朝食を食べ終えた紗良はのそのそとキッチンの吊り戸棚の扉を開けた。
 今日の気分は薄めのモーニングブレンドだと、目当ての缶に手を伸ばす。しかし、あと少しという所で届かない。背伸びして踵を浮かすも、あと数センチ足りない。

「代わりにとりましょうか?」

 背後から突然囁かれた静流の声に、注意が削がれる。

「あ!!」

 掴み損ねたモーニングブレンドの紅茶缶はゆっくりと床に落ちていった。落ちた拍子に蓋が取れ、無残に茶葉が散らばった。やってしまったと額を押さえる。

(もったいない……結構高かったのに……)

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