※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
その日の夜、夕食を済ませた二人は食後に紗良が茶葉を煮出して淹れたロイヤルミルクティーを飲んでいた。
アイスでも美味しいけれど、冷房で冷えた身体にはホットが染みる。
カップが空になるとふうっと息を吐き、ひと心地つく。
「紗良さん、今週の日曜は何か予定はありますか?」
「いえ。特にありませんよ」
「よかったら日帰りで遠出しませんか?」
二人きりでどこかに出かけるなんて北海道以来だった。あの時は目的が目的だっただけに楽しいお出かけとは言い難かった。
紗良はしばし悩んだ。紗良はまだ静流から向けられる好意にも、自分の気持ちにも折り合いがついていない。
しかし、気まずいからという理由で断ったら今度は静流に失礼になるような気もした。
「……いいですよ」
紗良は考えた末に、静流の提案に乗ることにした。断る理由が見つからなかったというのが本音だ。
約束の日曜日、静流は例のごとくレンタカーを借り紗良を迎えにやってきた。
出発は朝の八時。アフタヌーンティーに連れて行かれた時と比べるとかなり早い。
「今日はどこに行くんですか?」
「着くまで内緒です」
東京から日帰りで行ける範囲というとおのずと場所は限られてくるが、一体どこに行くつもりなのだろう。
静流の運転する車は首都高を抜け、東名高速を名古屋方面に進んでいった。
この日は快晴で、梅雨が終わったばかりの本格的な暑さが到来する前の暑くもなく寒くもない快適な気候だった。