※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
道程は順調そのものだった。途中渋滞にはまることもなく、サービスエリアで休憩を取りつつ、出発してから二時間半が経過した。
西に進んでいた車はようやく高速道路を下り、一般道を走行し始める。しかし、この一般道というのが少々曲者だった。
一般道とは名ばかりの山道、それも結構な急勾配が続いていく。
車酔いを覚悟しながらグネグネとした急カーブが続く山道を走り抜けると、ようやく一軒の建物が見えてくる。
「着きましたよ」
「わあ……素敵!!」
紗良は車から降りるなりはしゃいでしまった。
静流が連れてきてくれたのは古民家をリノベーションしたカフェだった。これが紗良の好みのど真ん中だった。
昭和の初期に建てられた長屋をリノベーションしたレトロなカフェは、山奥にあるからこそノスタルジーにどっぷりと浸れることができそうだった。
古材を使ったデッキテラスとコンクリートと木材を調和させた外観はグッとくるものがあって、つい写真を撮りたくなってしまう。
「ここでは和紅茶が頂けるそうなんです」
「え!?和紅茶が飲めるんですか?」
「さすが紗良さん。和紅茶のこともご存じなんですね。私なんてネットで調べて初めてその存在を知りましたよ」
日本で流通している紅茶のほとんどはインドやスリランカなどの外国産だが、緑茶大国日本でも紅茶は各地で生産されている。
加工方法が異なるだけで、そもそも日本茶も紅茶も烏龍茶も同じ茶葉から作られている。
緑茶用に生産されている茶葉を紅茶に加工したもの、それが和紅茶だ。
日本ではまだ知名度は低く、今後は需要が増えるだろうと予想されてはいるが、まだまだ課題は多い。