※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「花火大会?」
ほのかと電話をしていた紗良は思わず壁に掛けてあるカレンダーを見上げた。案の定、カレンダーは七月のまま長らく放置されていた。
スイカがプリントされている七月部分を破り捨てると八月の花火のイラストが顔を出す。
「もうそんな時期だっけ?」
紅茶フロートの提供が始まったことでここのところ土曜だけでなく日曜もスピカに出勤していた。夏の恒例行事までチェックの手が回らない。
『あの部屋から花火がよく見えたじゃない?花火大会の日に遊びに行っていい?せっかくだから今年は四人で見物しようよ!!』
「私はいいよ。静流さんにも聞いとくね」
ほのかからの電話を切ると、静流の部屋に行き花火の件を伝えた。
「この部屋から花火なんて見えたんですか?」
「はい、駅の反対側にある川の土手から打ち上げられるので、真正面からばっちり見えるんです。マンションのオーナーさんも花火が見えるように建てたんじゃないですかね?」
「私は構いませんよ」
静流から許可をもらい、紗良は喜び勇んでほのかに花火見物決行のメッセージを送った。
(楽しみだなあ……)