※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。


 花火大会当日、打ち上げ開始時間である六時よりも少し早めに羽宮夫婦が到着した。

「いらっしゃい」
「はい、これお土産のお酒だよ。紗良には美容にいいブドウ酢のジュース」
「ありがと」
「適当に冷蔵庫に入れておくね〜」

 準備で手が離せない紗良の代わりにほのかの夫の遼が冷蔵庫に缶ビールを入れてくれた。

「紗良さん、どのグラスを出します?」
「一番上の棚に切り子のグラスがあるので、それでお願いします」
「わかりました」
「あ、トースターも予熱してもらえます?」
「予熱ならもう済んでますよ」
「さすが、静流さん!!」

 紗良は冷凍庫から通販で買ったマルゲリータピザを取り出し、トースターにセットした。
 静流はグラスを洗い、サラダをボウルに盛り付けるとベランダに広げた折りたたみテーブルまで持って行った。

「こちらの皿も持っていっていいですか?」
「はい、お願いします」

 阿吽の呼吸で宴会の支度をしていく二人にほのかと遼はしばし呆気に取られていた。

「高遠センパイ、少し雰囲気変わりました?」
「そうですか?」

 遼は怪しいと言わんばかりに、静流の顔をマジマジと眺めた。

「うん、それに紗良も……。さては何かあったな!?」

 お酒を運んでいた紗良はほのかから、吐け〜とばかりに脇腹をグリグリと肘打ちされた。
 恋人になったことを二人に伝えるかどうか、事前に静流とは取り決めしてあった。目配せを送ると、静流が頷いた。

「その、実は……私達付き合い始めたの」
「おめでとう!!」
「ありがとう、ほのか」

 ほのかは紗良の手を取り、きゃっきゃっとはしゃいだ。
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