※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「紗良さん」
全てを話し終えると静流は紗良を優しく抱きしめてくれた。
静流ならそうしてくれるだろういう甘えがあった。ずる賢い自分がほとほと嫌になる。
静流には片岡と会うように急き立てたくせに自分のことになると……二の足を踏んでしまう。
「私、ずるいんです……。静流さんに傷を上書きして治してもらおうなんて……都合が良すぎますよね……」
「もう、黙って」
大きな手で顔を撫で包まれ、親指で唇の縁がなぞられていく。
「静流さん……?」
「紗良さんの頭はまだ彼のことでいっぱいですか?」
紗良は誤解を解こうと大きく首を横に振った。
「違う……!!私、静流さんだから……もう一度恋がしたいって思えたんです」
他の人ではきっとダメだった。
ありのままの紗良を慈しみ好きだと言ってくれた静流だからこそ、すべてを曝け出してもいいと思えた。
「紗良さん」
紗良の言わんとしていることが伝わったのか、静流にそっと口を塞がれる。
最初は小鳥が餌を啄むような優しいものだったが、次第に荒々しく口内を蹂躙していくような激しいものにさま変わりした。