※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「ん……、し、ずるさん……?」
「今日は止められそうにない」

 いつまでも終わらない口づけの情熱そのままにソファに押し倒される。
 静流の瞳に映る燃えるような恋情に胸が焦げつきそう。
 強引にねじ込まれた舌を追い求め絡めあっていると、頭が真っ白になっていく。足りない。もっと、もっとと夢中で欲しがってしまう。
 紗良は心のどこかで理性の軛から解き放たれた静流を見てみたいと望んでいた。今、まさにその機会が訪れようとしている。

「あ……」

 ブラウスの裾から静流の手が忍び寄る。長い指で下着越しに胸の膨らみが無造作に揉みしだかれ、息が上がった。

「ん、あっ……」
「紗良さん……」

 紗良の恍惚とした表情を見ると、静流は興奮を抑えきれずそのまま舌で鎖骨をなぞった。ちゅうっと肌を吸われると身体がびくりと震えた。
 もっと触ってと、はしたなく叫び出したくなる。嬌声はすべて静流へと口移しで飲み込まれていった。

(このまま……最後まで……)

 紗良はめくるめく一夜を期待し、静流の背中に腕を回した。身体の関係を持つことは嬉しくもあり怖くもあったが、もう止められない。
 そんな紗良に予想外の出来事が起こる。
 衣擦れと吐息に支配されていたリビングに、突如無機質な着信音が鳴り響いたのだった。
 熱に浮かされていた頭と身体が急速に正気に戻っていく。
< 168 / 210 >

この作品をシェア

pagetop