※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「よし、吉住!!しばらく三船さんの彼氏のフリをしなさい」
「イエッサー、姐さん」

 彼氏役に任命された吉住は軍隊よろしく敬礼のポーズをとった。

(彼氏のフリ!?)

 木藤の提案に紗良は度肝を抜かれた。紗良にとって望ましいとは言えない事態に発展していく。

「あ、いやでも……!!」
「三船さん、しばらくはボディーガード代わりに吉住と一緒に帰ってくれる?それで様子を見てみましょう」
「はい……」

 多少強引であることは否めないが、木藤が紗良を心配していることだけはよくわかる。
 彼氏がいないと宣言してしまった手前、嫌とも言えず押し切られる形になった。

(あれ?なんか、すごくややこしいことになった……?)

 静流の架空の妻が紗良で。
 紗良の架空の彼氏が吉住になった。
 紗良の本当の恋人は静流なのに。

 紗良はチラリと静流のデスクの方を見た。今の会話は当然、静流にも筒抜けだった。
 ピリリと空気がひりついたのは気のせいではないはずだ。
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