※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

 大浴場から戻ってきた二人は窓際のソファセットに腰掛け、眼下に広がる景色を眺めていた。

「良い景色……」

 窓からは夜の湖が見えた。月が揺蕩う水面が風に吹かれて時折揺れる。ソファで寛ぎながらその様をぼうっと見つめていく。
 たまには上げ膳据え膳でのんびりするのもいいのかもしれない。
 特に静流は業務改善プロジェクトのメンバーに抜擢されてからは目に見えて残業が増えていた。
 温泉に浸かり綺麗な景色を見れば大いにリフレッシュできたことだろう。

「どうです?気晴らしになりました?」
「いいえ、まだです」

 静流はそう言うとポンポンと己の膝を叩いた。

「紗良さん、こちらにどうぞ」

 ここに座れということだろうか。どうぞと言われたら、やぶさかではない。

「こうですか?」
「ええ」
 
 紗良はいつかと同じように、静流の膝の上に座った。浴衣を着ているので、横向きだ。
 上目遣いで顔を見上げると額、頬、目尻、そして最後に唇にキスを落とされる。

「この間は乱暴にしてしまったので今日は優しくします」

 髪をアップにしていたせいで外気に晒されていた無防備なうなじを撫でられると、ゾクリと鳥肌が立った。
 キスを繰り返していくと、じわじわと身体の内側が熱くなっていく。
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