※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「納得できません!!」
木藤は声を荒らげると静流のデスクを力一杯叩いた。
静流はこの日、かねてからの懸念事項に関して大鉈を振るった。
「……納得していただく他ないですね」
「私の顧客を他のチームに渡せなんて、そう簡単に納得出来るものですか!!」
今朝方、静流は木藤を呼び一方的に顧客を譲るように言い渡した。
顧客を他のチームに渡すということは、自らの手柄を横取りされるようなものだ。木藤が怒り狂うのは当然のことだ。
「貴女がこれまで担当した案件をすべて拝見させて頂きました。結論から申し上げるなら、これ以上仕事を任せられません」
「私では力不足だと?」
「違います。ひとりで抱えるには負担が大き過ぎると言っているのです」
静流は木藤にも分かるように説明した。
チームごとの収益のバランス、勤務時間、勤務査定。客観的なデータを見せ論理的に説明されれば木藤とて黙るしかない。
「エースしか活躍できないような部署に未来はありません。貴女が担当している顧客のいくつかは他の方に担当してもらいます。いいですね?」
木藤は悔しそうに唇を噛み締め、懸命に何かを堪えていた。