※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
昼休みになり、紗良は木藤と屋上にあるテラスにやってきた。いつもは食堂で食べるが、木藤のガス抜きをするためには真冬で人気のないテラスの方が良いだろうと判断した。
「あんの……横暴課長っ!!」
「まあまあ、木藤さん。お紅茶でも飲んであったまりませんか?」
タンブラーを渡すと木藤はグビっと中身を飲み干していった。
しかし、紗良の伝家の宝刀を持ってしてでも木藤の怒りをおさめることは不可能だった。
「私がどんな思いでここまで顧客を増やしてきたと思ってんのよ!!あの腐れ眼鏡ー!!」
腐れ眼鏡という単語が空にこだましていく。テラスにきて正解だった。仮にも上司である静流を腐れ眼鏡と毒づく木藤の様子を見られては大変なことになる。
「私も課長の意見には賛成です。木藤さんは少し働き過ぎなんじゃないかなって前から思ってました」
「私が好きで働いてるんだからいいでしょ!?」
本人がよくても毎日のように深夜まで残業し、休日出勤は当たり前の生活を送っていては他の課員には良くない影響がある。
静流が介入したということはやはりやり過ぎだったということだ。
「あったまきた!!食べ終わったらもう一回直談判してくる!!」
木藤はそう言いサンドウィッチを手早く口に運び入れた。
しかし、処置の撤回を再三訴えても静流の決定は覆ることはなかった。