※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「ただいま帰りました」
「おかえりなさい」
先に帰ってきた方が夕食を作るというルールに従い、紗良は夕食を作るためキッチンに立っていた。
紗良から一時間ほど遅れて帰宅した静流の表情は疲れ切っていた。木藤の顧客を取り上げ他のチームに割り振るという決断には課内にも賛否両論巻き起こった。
静流に賛成する意見もあれば、木藤の味方をする者もいて、今や二課は二つの派閥に分かれようとしている。
この騒ぎをどう収めるかはひとえに静流の手腕にかかっていた。
「手伝います」
「ありがとうございます。じゃあお味噌溶かしてもらえます?」
自室から着替えて戻ってきた静流にお玉を託し、紗良は出来上がった料理をダイニングテーブルに運んでいった。この日のメイン料理は豚の生姜焼きだ。豚肉はスーパーのセールでゲットした特売品。付け合わせのサラダと作り置きの里芋の煮物、静流が完成させた味噌汁を添えれば夕食の完成だ。
「いただきます」
「いただきます」
静流と食卓を囲むのは、週に二、三回。時間が合えばこうして一緒に食べるが、帰宅時間によっては別々になることもある。もちろん、友人との付き合いや仕事の兼ね合いもある。