※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
次の週の日曜日。
紗良は購入以来一度もつけていなかった結婚指輪を左手の薬指に嵌めた。
デートをして欲しいと言われ承諾した紗良はこの日、静流と出掛けることになっていた。
万が一でも一緒にいるところを会社の人に見られたらまずいので、レンタカーを借りて移動する手筈になっている。慣れない左手の感触に戸惑っていると、スマホにレンタカーを取りに行った静流からメッセージが届く。
『着きました』
連絡を受け、マンションの入口に向かった紗良は横付けされた車の助手席に身体を滑り込ませた。助手席が埋まると車は直ぐに発進した。
静流の横顔にチラリと目をやると、紗良はデートの意義を再度問いただした。
「写真を撮るためだけに出かける必要ってあります?」
「バリエーションが多いに越したことはないでしょう?愛する妻をどこにも連れて行ってあげない甲斐性なしと思われるのも困りますし」
デートして欲しいと言われ何事かと思って理由を聞いてみれば、月城と『最近奥さんとどこに出掛けたか?』という話になり返答に窮したことがあったらしい。
(そういう意味じゃなかったんだけどな……)
木藤の説得に手を貸すと言う意味で、助力を申し出たつもりだったが、静流が楽しそうだから、まあいいかという気にさせられる。