私を甘やかしてくれる人いませんか?
当日、郁美の家に大悟と行った。
郁美はにこにこして出迎えたが、知らない人が一緒なので急に顔が曇った。
「正志さん、いらっしゃい。こちらの方は? 」
「従兄の大悟です。」
「初めまして、草薙 大悟と申します。本日は同席させていただきます。」
大悟はそれだけを言って頭を下げた。2人は居間に通された。
お母さんがお茶を持って来た。
「正志さん・・・」
「お久しぶりです。御無沙汰しております。本日はお詫びに伺いました。」
「お詫びって何? 」
郁美は慌てて言った。
「この度、郁美さんとの交際を終わりにさせていただきました。」
「聞いていないわ。郁美、そうなの? 」
「私は了承していない。」
「3年近くお付き合いしておきながら、申し訳ございません。」
正志は頭を下げた。
「何てこと・・・今日は結婚の許しをもらいにいらしたものと思っていました。もういい年の娘を・・・別れるなんて・・・」
郁美のお母さんは泣き出した。
郁美が声を荒立てた。
「お母さん、この人ね女作ったのよ。それで私を捨てようとした。私はあんなに尽くしたのに・・・正志さん、私は心が広いの。今までのこと全て忘れるからもう一度やり直して・・・」
「郁美さん。それは出来ません。」
「なんで? 何でよ。」
正志は未来の家に届いた手紙のコピーをカバンから出し、テーブルの上にお母さんに見えるように置いた。
「君は、僕と別れたくなくて、このような手紙を送った。また、会社にまで来て騒いだりもした。僕に言うならまだしも、彼女や彼女の家族、会社に対してだ。僕は、少し前から僕がいないときの行動や言動に疑問を持っていた。だから、少し距離を開けようと思った。このところ会わないようにしていたのはそういう理由だ。だから、君とは復縁は出来ない。」
郁美の母は、手紙のコピーを見て驚いた。
「・・・郁美、これを送ったの? 」
「送ったわよ。憎たらしいあの女の家に。」
郁美の母は目をつむった。そして口を開いた。
「正志さん。郁美のしたことは常識を外れたことです。でもあなたが郁美を振ったことに関しては許しがたいです。」
「わかっております。申し訳ございません。」
大悟が話の間に入った。
「郁美さんには正志から再三再四、これ以上付きまとわないで欲しいと申し上げて参りましたが、会社に行ったりこのような手紙を送ったりとエスカレートするばかりです。そこで、今後このようなことをしないということを約束していただきたい。この書類に署名捺印いただきたいのです。郁美さんとお母様のお2人に。」
郁美の母は大悟が示した書類を見た。
「これは・・・」
「申し遅れました。私弁護士をしております正志の従兄にあたります草薙 大悟と申します。」
大悟は名刺を出してお母さんに渡した。
「これは、今後郁美さんやお母様が、正志や未来さんと関係するすべての人とのコンタクトをしないという誓約書になります。今回の郁美さんの行動は、誹謗中傷であり、屈辱罪にあたります。もしこの書面に署名捺印していただけないのであれば、こちらとしては訴えを起こさせていただきます。まずは、書面をご確認ください。」
郁美も郁美の母も、硬い顔をして書面を読んだ。
「・・・郁美、サインなさい。」
郁美は涙を流し、震えていた。
「郁美!」
お母さんは声を荒立てた。
しばらくして郁美は署名捺印をした。保証人として郁美の母も署名捺印した。
「一部お渡しいたします。それではこれで失礼いたします。」
正志と大悟はすぐさま郁美の家を出た。
「大悟兄い、有難う。やっぱり弁護士の肩書は違うな。」
「もうごめんだぞ。こんなの。まったくさー、こんなのの為に弁護士になったわけじゃない。」
「有難う。感謝する。」
「さーてと。何おごってくれるんだ? 」
「何でもいいよ。寿司? 焼肉? 」
「未来さんの手料理かな? 」
「待って。僕もまだ食べてない。」
「ハハハ。嘘だよ。寿司でいいさ。」
二人は寿司屋に行った。
正志は未来に電話を入れて一部始終を説明した。
「今度またご両親に説明に行くから。」
「ありがとう。」
「未来、ホントごめんな。イャな思いさせて。」
「ううん。大丈夫。正志、お疲れ様。」
「ありがとう。未来・・・あーもうすぐに会って抱きしめたい! 」
「バカ! 」