ジェラシーを彷徨わせて



「だって、なきが、昨日言ったんだよ……」


昨夜、昔からお馴染みのバラエティー番組を見ていたとき、凪がぽろりと零した言葉。


『なぎ!この女優さん、すっごくかわいい……白くてふわふわ……』


艶々な黒髪をゆるいハーフアップに結って、真っ白なフレアワンピースを身に纏った女性は、最近テレビでよく見かける女優さん。


司会のアナウンサーに話を振られた彼女は、ふふ、と鈴を転がしたような声ではにかむ。
 

そのあまりの愛らしさにはしゃぐわたしとは対に、ぼー、と隣で仏頂面を貫く男は、欠伸をこぼしながら眠そうに目を擦る。噛み合わないのはいつものことだし、今回はまだ意識があるだけ許容範囲。


『ん、……ふわふわ、くすぐってえ』

『違う、それわたしの髪だから。3秒でいいから目開けてテレビ見て!』

『……急に耳元でさけばないでもらってい?』


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